
昨日のシュークラブとはうって変わって、この日のライブは大阪のビジネス街にあるこざっぱりしたコンサートホール、小雨がぱらつく中、少し早めに到着した我々3人は、会場の向いにあるホテルにチェックイン、シャワーを浴び、着替えなどして気合いを入れる。
先日のセブンスフロアでのライブの時のように会場まん中に3人向き合うように陣取り、会場自体の響きを生かすためにマイク、PAなしで演奏することにする。こういう場合、私が心配なのは、いわゆるクラッシックや現代音楽のコンサートの時のような緊張感をお客さんに強いるのではないかと言うことだ。ある程度の音量や、飲み物のグラスがカチャカチャいう音などがあったほうが、リラックスできたり、いろいろな人の、いろいろな事情に寛容であれたりして、いいんじゃないかと思ったりする。子連れでファミレスにはいって、よその子が騒いだり泣いたりしてると少しホッとする感じ。(ちがうか。)微妙なニュアンスや、緊張感をそぐのではないかと言う意見もあるが、CotuCotuに関しては別に大仰な実験をしているわけでもなく、たんに人気者になりたいとか、若い女の子にキャーキャーいわれたいとかいった、純粋な理由でやっているのだから(これは三木の個人的な意見で、他のお二方は一緒にされると御迷惑でしょうが)もっとリラックスして聴いてもらいたい。楽しんでもらいたい。(方法論が根底から間違っているのではないかという自覚は少しある。逆にいえば少ししかない。)
さて、この大阪でも、坂本人気は健在で、ずいぶんと早くから会場には坂本君目当てのお客さんが詰め掛けていた。さらに、佐藤君のファンも様々なプレゼントを手に会場に来てくれていた。数の上ではお二人に到底及ばずながらも、三木の呼んだお客さんも来てくれた。以前アートファニチャーギャラリーの家具を買ってくれたOさん御夫妻、ありがとうございました。おかげで三木も一矢むくいる(だれに?)ことが出来ました。
さて、ライブの演目は昨日とほぼ同じ。ただ、会場の雰囲気はずいぶんと違って、何かこう、クラッシックのコンサートのような張り詰めた緊張感。それをふりはらうかのようにダイナミックな演奏で始まった「3の1」。曲が終わり、やや戸惑いがちにも思える拍手。
我々スタッフに緊張感が走った。こころなしか昨日に比べてぎこちないMC。しかし、あわてることはない。我々は粛々と、しかし丹田から直接たたき付けるような演奏で演目をすすめた。(なんのこっちゃ)
曲間で、佐藤君の提案により、会場の客明かりを少しあげてもらった。

お客さんの反応が手にとるように見える。次は「メメントモリとプロパガンダ」だ。三木はすかさずこういった。「手拍子をしてください。」大胆な要求だ。坂本君がいさめる。「少し難しいんじゃないかな...。」三木は変拍子ながら、4分のなんとか拍子のおおい譜面に目をやりながら述べた。「いや、4分音符でたたけばできるはずだ。」その直後一ケ所8分の7拍子があることに気づく。(...まずい。このまま行くと途中でウラ打ちになってしまう...)さらにその直後、もう一ケ所8分の7拍子があることに気づく。(...しめた!ここでオモテ打ちに復帰できる!案ずるより産むがやすしだ!いちかばちかいってみよう!)なんの事はない。拍手は起こらなかった。事後の坂本君の指摘によれば、ひとり途中までたたいている人が居たという。その人!どうもありがとう!

途中、休憩をはさみ、またしてもたたみかける後半に突入。後半になると、我々は確かな手ごたえを感じていた。そしてついに最後の曲「月魚’98」。電チェロ、火花をちらす演奏、黒々とした歌声。弓の毛を切りまくり、汗だくで演奏終了。

今日のアンコールは坂本君の「ぼくはいま、深い夜」。坂本君は奥のグランドピアノに向かった。歌ものからっきしだめな三木が、しんそこ良いと思う坂本君の歌詞。キメのフレーズのタイミングを間違えたが、それでもいい感じで曲は終わる。またしても拍手、拍手。
汗を拭きふき、2階の控え室に戻った我々を、ホールの人が呼びに来た。「アンコールがやみません。来てください。」やった!
2曲めのアンコールは「鳥の歌」。これにてCotuCotu初のツアーライブは演奏終了。戦いの舞台は打ち上げ会場、牛なべ屋に持ち越された。
あした、仕事がはいった佐藤君は少し早めにホテルに戻った。残された三木、坂本の二人は5時閉店まで飲みつづけ、10時ロビー集合を約して部屋に戻る。
翌日、仕事のため早だちする佐藤君の電話に起こされ、約束の10時に間に合う。こんな飲み方をしたのは十数年ぶりだろうか。少し二日酔い気味ながら、ハンドルを握り、雨のあがった新御堂筋を行く。
帰りの車の中ではおなじみ、ラジオでかかっていたオーケストラ曲の“曲当てっこ”をやる。一曲めはたやすく当てることが出来た。ベルリオーズの“幻想”だ。例の“最後の審判のテーマ”(13日の金曜日のテーマみたいなやつ)がでてくれば、少しクラッシックをかじった人なら誰でも当てられるだろう。しかし2曲めは...。(この曲は聴いたことがある...。少しブラームスっぽくもあるが、彼の曲にこんなのがあったろうか...。チャイコフスキーっぽくもある...。しかし長い。結構長い。)「よしっ、ここはひとつブルックナーといっておこう。」
さっきの“幻想”が偶然であって、はずれるほうが普通なのである。三木の正解率は、たぶん5%以下であろう。
気を取り直して、車は一路、東京をめざす。話題はCotuCotuのレコーディング、CDの事になる。200万円くらいあれば旧共産圏に行って有名なオーケストラを使って録音できるかも知れないなどと夢のようなことを話している。「“嵐が丘’98”とかやったりしてね、けっこう感動的かも。」「自作のコンチェルトやったりしてね」「いや、“運命”とか“新世界”とかクラッシックの曲を振ったりしてね。それでインディーズでCD出すんだ。」「そんなことやったら非難ごうごうだろうね、また日本人は金にまかせてデタラメやっとる、けしからんとか。」「国辱的なアルバムとかいわれてね。」「それで“肝心な演奏のほうはと言うと、全くお粗末なもので、当然この名門オーケストラの楽員の意気もあがらず...”とかCD評に書かれたりしてね。」そこで坂本氏いわく、「ぼくは200万あったらハープ奏者とバレリーナを10人づつ集めてまん中で“白鳥”弾くんだ。全員22歳以下。」などと夢を語り合うと言うよりかは単に欲望を口に出し合いながら車を走らせた。オヤジ化はなすすべもなく進行する。
今日(98.2.11)メールをチェックしたらこのライブを見に来てくれた大阪のKATOさんから写真付きメールが届いていた。さっそくページにのせさせていただきました。自分で演奏していると撮影が出来ないし、あらかじめ誰かに頼んでおくようなマメさが足りない我々にとってはKATOさんのようなかたの御好意にたよるしかない。ちなみにこのライブの録音も坂本君がDATを準備していたにもかかわらず、スイッチを入れるのを忘れ、カウンターは3秒で止まっていた。というわけで、KATOさんありがとう!